パイロットフィッシュ/ 大崎善生
「人は、一度巡り合った人と二度と別れることはできない」
その印象的な文章が全体を通して物語られていく。
人間は記憶の集合体だから、その人と出会った記憶や思い出を完全に消すことはできない。
だから二度と会うことはないとしても、完全に別れることはできないんだって。
確かに。
私の人生の中でも、もう二度と会うことのできない人や、これからの人生で会わないかもしれない人が多くいるだろう。
それでも、巡り合った経験は事実として残るわけだし、それを完全に消すことはできないから、人間を記憶の集合体として捉えるのであれば、一度出会った人とは二度と別れることはないんだろうな。
俗に言う【記憶の中で生きる】ってやつか。
【あらすじ】
午前2時。山崎のもとにかかってきた電話の相手はかつての恋人、由希子だった。19年ぶりに聞くその声は、記憶の泉の底から彼女と過ごした様々な日々を思い起こさせた。勘違いからアダルト雑誌の編集として働くことになった山崎が、これまでに出会い、印象的な言葉を残して去っていった人々を追想しながら綴られていく物語。
出会いと別れが生み出す切なさや寂しさ。人間の揺れ動く優しさや後悔の残像。そんな細やかな思いが、透明感を帯びながら綴られている。
タイトルにもなっているパイロットフィッシュ。
なんだか切ない存在で。
人が熱帯魚を飼い始める時にまず必要なのは水槽ですよね。
でも、そこにただ水を入れて飼い始めると、熱帯魚は死んでしまうかも。
なぜなら、魚には適した環境があって、それを形成するバクテリアはただの水に最初から住んでいるわけじゃないから、まずはパイロットフィッシュを試験的に飼い、バクテリアを繁殖させてから、その水槽でお目当ての熱帯魚を飼うってわけです。
なので別名テストフィッシュとも呼ばれています。
本命の魚がきちんと住めるように試験的に飼われる魚。
安価で手に入れやすく、死んでしまっても後悔がない淡水魚が選ばれやすいみたい。
うーーーーん。
死んでしまっても後悔のない命ってなんか…ね。
どんな命も意味があって、存在価値のある物でいてほしいと思うけど、それはエゴでもあるよね。現に、私が生きてる限り何かの命を奪って今日を過ごしてるから。
どんな命にも意味があってほしいと思うのは、自分の命にも何かしらの意味があって生まれてきたと思いたいからなのかもしれない。
ちょっと深い話になってしまいましたが!!
生まれてきて、誰かと出会って、その存在を知って、記憶に留めてってできるのは、この時代同じ時に巡り合う機会が会ったから。
それってすごいことだと思う。
今このブログを読んでくださってる方ももちろん。
数あるSNS、ブログ、情報の中でここに辿り着いてくれて、ここまで読んでくれてありがとうございます。
きっと人生は長いようで短い。
だから出会えた奇跡を大切に日々を過ごしていきたい。
たとえ辛い別れがあったとしても。
辛い経験になってたとしても。
そこに意味を持たせるのも、嘆き続けるのも自分次第。
意味を持たせて強くなるも良し。
嘆きから生まれる感情を知るも良し。
全ての経験が今日の私を眠らせ
明日の私を形作る。